2018年8月5日日曜日

お勧め本『日本会議の研究』著:菅野完

この本は、現在の安倍政権を支え、日本の政治に大きな影響力を行使している日本会議という団体についてのルポタージュです。


事前に書いておきますが、私は安倍政権を支持していませんし、この日本会議と呼ばれる団体で活動している人達の政治思想には全く同意できないと感じています。しかし、この本に出てくる日本会議を束ねる人達が、自分達の思想を政治に反映していこうとしてきた方法について思うところがあり、記事にしてみました。

日本会議は、右翼的な考えを持った様々な宗教団体の連合体です。教義や信仰対象が違う宗教団体が、日本という国家の在り方について自分達の理想を追求する過程で緩やかな繋がりを作り、1つの大きな宗教団体の連合体を結成し、日本の政治に影響力を行使してきた、ということのようです。日本会議の源流となる団体「日本を守る会」の結成は、1974年で、今年で既に44年が経過しています。日本会議は、宗教団体の連合体として、44年の長きに渡り、日本の政治に影響力を行使し、安倍政権は、成立時から日本会議の強い影響下にあります。

著者は、この謎の多い団体について、膨大な資料に当たり、様々な関係者にインタビューをして、その実態に迫っています。さて、日本会議は、44年間どのような活動をして、ここまで政治に対する影響力を強めてきたのでしょうか。

この本の最後、「むすびにかえて」の部分には、以下のような一節があります。「この間、彼らは、どんな左翼リベラル陣営よりも頻繁にデモを行い、勉強会を開催し、陳情活動を行い、署名集めをしてきた。彼らこそ、市民運動が嘲笑の対象とさえなった80年代以降の日本において、めげずに、愚直に、市民運動の王道を歩んできた人々だ。その地道な市民活動が今、「改憲」という結実を迎えようとしている。彼らが奉じる改憲プランは、「緊急事態条項」しかり、「家族保護条項」しかり、おおよそ民主的とも近代的とも呼べる代物ではない。むしろ本音には「明治憲法復元」を隠した、古色蒼然たるものだ。しかし彼らの手法は間違いなく、民主的だ。」

私は、日本会議について、右翼的な思想を持った団体ということは知っていました。そういう団体が、どうしてここまで政治的影響力を強めたのか、以前から疑問に思っていましたが、この本を読んでみると、その活動の方法が、勉強会の開催、陳情活動、署名集め、デモといった、特別でも何でもない、非常に地味な方法の積み重ねであったことがわかります。これらの方法は、ソーシャルアクションの手法そのものです。このことは、私にとって新鮮な驚きでした。そのような地味な活動を、40年以上もの長い間、飽きることもなく地道に積み重ねてきたということも特筆すべきことであると思います。

そして、これが一番重要なことですが、日本会議は、これらの活動を、高度に組織化された形で展開してきました。ある団体が社会的影響力を強め、政治に対する影響力を行使することができるようになるためには、その活動が組織化されていかなければならないということがよくわかります。この本の後半部分では、日本会議の影の中心人物と言える、1人の天才オルガナイザーの実像が記述されています。

本の内容は、日本会議という団体の歴史、関係する人物の活動史がほとんどであり、読む人によって好き嫌いは分かれると思います。私達が何らかの形で社会に働きかける活動をする時、その活動を組織化し、地道に継続していくことが重要である、ということを教えてくれる本でした。