2014年11月1日土曜日

ソーシャルアクションの方法  年越し派遣村に学ぶ(4)  野生について

年越し派遣村を成功させた重要な要素の4つ目ですが、主催者達が、年齢を重ねながらも「野性」を持ち続けた人達だったということがあると思います。
日比谷公園4
 


「野生?何のことですか?」と言われそうですね。「野生」という言葉は、あまり一般的には使われないので、私なりに「野性」を定義してみます。「自分を飾らず自然体で、世俗的な価値観に従属せず、自分が所属する共同体のために、自分の全てのエネルギーを注いでいこうとする強い気持ち」と言えるかなと思います。自分が有名になりたいとか、出世したいというような「野心」とはまた違うものです。年越し派遣村の主催者達は、心の内に、この「野性」を持っていたように思います。そして、この「野生」は、色々な人の協力を得てソーシャルアクションを起こす際、主催者側にどうしても必要なことなのではないかと思うのです。


私が派遣村主催者達の「野生」を感じたのは、当時の湯浅誠氏を初め、主催者達の一連の言動や、立ち振る舞いからでした。湯浅氏のことは、テレビで見た他に、年越し派遣村の中で何度か見かけました。日比谷公園の狭い道ですれ違うこともありました。湯浅氏が多くの人の前で演説をしたり、携帯電話で厚生労働省の関係者と必死で交渉しているのを見るたびに、その眼の奥に、何かが宿っているというような印象を受けました。そして、それが多くの人を惹きつけているのではないかと思いました。

湯浅氏の言葉で最も印象的だったのが、「私は怒っています。」という台詞です。この台詞は、湯浅氏がテレビで1人演説する時、最初によく使っていました。湯浅氏はこの時、本当に怒っていたと思います。貧困や派遣切りという社会の理不尽に対して怒っていました。そして、私達に対しても、もっと怒るべきであると言っているように思えました。

湯浅氏の発する怒りのエネルギーは、多くの人達に影響を与えたと思います。私も湯浅氏の怒りのエネルギーに大きく影響されました。影響されたと言うより、魅了されたと言っていいかもしれません。その怒りは、湯浅氏の持っている「野生」から出ている純粋な怒りであり、利己的な動機から出ているものとは思えませんでした。それは人を惹きつけ、鼓舞し、説得するような何かでした。私はそれまで、このような物言いをする人に出会ったことがありませんでした。「自分のためではなく、他の誰かのために、あなたも怒って下さい。」と湯浅氏が私達に言っているような気がしました。


私は当時、ボランティアもあまりやったことがなく、デモにも参加したことはありませんでしたが、湯浅氏の演説や対話を何回か聞くうちに、「これは他人事ではない。私も派遣村に行かなければならない。」という衝動を自分の中に感じるようになったのです。


≪参考文献≫
平川克美『小商いのすすめ』ミシマ社、2012
 

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